日別アーカイブ: 2012年5月4日

安田浩一著 『ネットと愛国~在特会の闇を追いかけて』

安田浩一氏の『ネットと愛国~在特会の闇を追いかけて』(講談社)読了。
日本最大の「市民保守団体」といわれる在特会(在日特権を許さない市民の会)のメンバーを取材したルポルタージュ。

Twitter であまたの感想RTを見た後だったので、読み始めるのに少し勇気が必要だった。まったく読む前からハードルが高すぎる。心に防弾ジャケットを着込んで読んだおかげか比較的軽傷ですんだ。裁判の傍聴や件の動画で、罵詈雑言に対して少しは耐性がついたせいか(それはそれで問題)。それでも224ページで撃沈。抑えていたものが一気にあふれてしばらく本を閉じてしまった。ガラスのハートがうらめしい。

「ネットで真実に目覚めた」だけの人々と、「真実に目覚めた」あと実際にトラメガを持って街頭でヘイトスピーチを叫ぶようになる人々との違いはなんだろう。

読む前はそれが一番気になっていた。安田氏は在特会会員に対して、正面から根気よくインタビューを続けている。彼らも人の子だ。しかし、正直まだ理解できない。よくいわれる「承認欲求」や「リテラシー」だけの問題なのか。子を持つ親としては決して他人事ではない。

この本に衝撃を受け、不気味に思った読者でも、いったん本を閉じてしまえばもう何も見ずに済む人がほとんどだろう。中にはもっと「ひどい」外国の状況と比較して「冷静に論じる」人もいるだろう。しかしそうしている間にも、ヘイトの対象になった人々は心から血を流し続けていることを、この本がテーブルの上にあるのを見るだけで、喉の奥が苦しくなる人がいることを、どれだけの人が想像できるだろうか。

ところで突然話はとぶが、このところ親学関連問題がかまびすしく論じられている。たとえばこちら。

トンデモ教育論「親学」を推進してる人たちの話-俺の邪悪なメモ”
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/

そして彼らに共感する人も沢山います。「親学」に惹かれるのは、極端に保守的な思想を持ってる人だけじゃありませんよ。改憲論なんかには興味がないような ふつーの感覚のふつーの人でも「最近はダメ親が増えてるから……」とぼんやり思っていたりします。そういう層をバクバク食べて「親学」は勢いを増していく でしょう。これはたぶん止められない。

ここでの「ふつーの人」が、『ネットと愛国』で描写された、フジテレビ抗議デモに参加する「普通の人々」とどうしても重なって見えてしまう。内容は違えど、「そういう層をバクバク食べて・・・勢いを増していく」ことに対する恐怖感は私にとっては同じものだ。安田氏はその様子を「静かに、そしてじわじわと、ナショナルな『気分』が広がっていく」とし、その「気分」が在特会の背景にある「広大な地下茎」であると指摘している (p.313)。

それらに対する世間の反応は大きく異なっていると私は思う。「親学」のトンデモについては、それが私たちの生活に直ちに影響を与えるはずだという危機感が人々に共有されているように感じる。しかし、在特会やヘイトスピーチについては国内のことであるにもかかわらず、まだまだ他人事だという認識の人が多いという印象が、私の中でさらに強くなってしまった。

それにしても『ネットと愛国』に出ていた人の名前を、「親学」まわりでも見かけるとはあなおそろし。安田氏のいう「地下茎」がこのまま拡大すれば、いったいどのような日本になってしまうのだろう。

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